国際医療【医療の国際化と国際間における医療サービスの提供】
Medical Globalization/International Healthcare

国際医療は大きく三つに区分されます。
①観光やビジネスで日本を訪れた際に、体調を崩されたり怪我をされたりして日本の医療機関を訪問する
②治療や検査を目的としての訪日
③観光等のパッケージに、人間ドックなどの医療サービスが組み込まれた体験型
日本政府観光局(JINTO)の統計による訪日外客数ですが、2017年は2,869万1,000人(前年対比19.3%増)で、1カ月当たり239万917人、2018年は3,119万2,000人(前年対比8.9%増)で、1カ月当たり2,599万9,333人、と、年々増加傾向にあります。

2019年ラグビーワールドカップしかり、2020年の東京オリンピック(2021年)には多くの外客数が見込まれます。訪日滞在期間中に不測の健康被害を訴える方も相当数いると考えられ、日本の医療機関はこうした対応を迫られる状況が急速に進んでいるということが言えます。

突発的に訪れる外国人患者の受入に関して、日本の医療機関にも少なからず国際化が求められています。
一方、上記の②③は、いわゆる『メディカルインバウンド』『メディカルツーリズム』と呼ばれる領域です。
日本の医療を求めて訪れる外国人の増加はこれらに起因します。
但し、分化や言葉や商習慣、あるいは医療制度の違いなどによる齟齬、問題や懸念点もたくさんございます。
【1】正確な医療コーディネート【コーディネーターの重要性】
【2】言語面のサポート【医療通訳士の重要性】
【3】AGENTとの連携【ビジネスと倫理性のバランス】
メディカルインバウンド、メディカルツーリズムを成功に導く鍵は、上記【1】-【3】が挙げられます。
インバウンドやツーリズムに関しては、言語面の問題もあり、エンドユーザーが直接的に医療機関に問い合わを行ったり、受診されたりするケースはそう多くはないようです。そこには、旅行代理店や医療に特化した代理店(仲介会社)の存在があります。
いわゆる『AGENT』と呼ばれる事業会社で、ビジネス的に言う集客はこれらAGENTに懸かる側面が大きいと考えられます。

一方、エンドユーザーがAGENTを介して日本の医療機関を受診する過程において、日本の医療機関側に提供されるべきエンドユーザーの情報や、エンドユーザー側に提供されるべき日本の医療機関による医療サービス情報が、往々にして正確性に欠けていたり過不足があったりする報告例も少なくありません。(海外らの診断画像の粗さなど顕著な例です)。その要因を突き詰めると、AGENTに起因するケースが大きいようです。

AGENTによる、受診に際する客観的事実情報の伝達には変わりませんが、『ガン治療』のそれは、『20平米/ツインベット/禁煙』というホテル予約の際に生じる情報伝達とは大きく異なります。集客力があるからという理由のみで、医療機関と、医療とかけ離れたAGENTが直接的な取引を行う事に伴うリスクも少なくありません。

異なる文化を持つ様々な人種が共に生活をするオランダでは、多くの医療機関で医療通訳士という職業が確立されていると聞いたことがあります。医師や看護師で多言語を話す人間が通訳を兼務すれば良いという考え方もあるかも知れませんが、言葉を正確に聞いて伝える通訳という業務は、我々の一般的な想像を超えた専門性の高さや難しさがあります。また、医療業務に特化した医師や看護師が通訳を兼務をすると、集中力が散漫になり業務がどっち付かずになってしまうという考え方も前提になっているようです。医師は医師の仕事、看護師は看護師の仕事、そして、医療通訳は医療通訳の仕事といったように、医療通訳もチーム医療のひとつの役割を担う方が合理性に高いのでしょう。

例えば、中国からのツーリズムにおいて、日本を訪れるのも日本の医療機関に行くのも初めてであるという方は少なくありません。受付から検査までがどのような流れなのか分からないのはもちろん、血液検査の前に院内で飲食をしてしまったというような報告例もあるようです。ハイクラスのホテルに存在する絢爛豪華な設備やラグジュアリーなサービスを、医療機関に求めるような事も実際に起こり得ます。「この部屋は気に入らないので別の部屋に変えて欲しい。料金は幾らでも出す。」という主張はホテルでは通るのでしょうが、「聞いていた内容と違う。検査は行わない、お金も払わない。」このようなケースが人間ドックの当日に生じてしまったらどうでしょうか。

それらを現場でコントロールするのも医療通訳士の大切な業務の一つです。
検査の流れや所要時間はもちろん、PET/CT検査一つとっても、当日キャンセルに伴う医療機関側の経済的な損失や、糖尿病の有無、空腹時血糖値の事前確認、或いは、日本と中国の血糖値の単位の違い等、必要知識や確認事項は多くあり、コーディネータをはじめ、これらは医療通訳士にも求められる領域です。日本語が喋れる、という自己申請に基づくバックグランドに任せて第三者経由の人間に通訳業務を担わせるリスクは明らかでしょう。
海外からの対応のために人材を雇用し、国際室のような機能を設けられる医療機関はそう多くなないでしょう。医療ツーリズムもここ10年(2019年時点)の産業ですし、海外からの受入に伴う各種業務は、それまでに医療機関にほぼ存在しなかった業務と言えます。従って、事務室のスタッフ等が通常業務にプラスして対応しているのが実情です。さらには、国内患者の対応でただでさえ忙しく疲弊傾向にある医師や看護師の、それにプラスして文化の異なる患者の対応という精神的、肉体的負担は想像に難くありません。

当たり前の話ですが、AGENTは慈善事業ではなく、経済的概念においてインバウンドもツーリズムもビジネスとして捉え運営していますから、その要望や問い合わせも多岐に渡り、中には、医療の範疇にないような内容も求められます。それにより、日常の医療業務に支障をきたしてしまっては元も子もありません。また、ビジネスで行う以上、事業会社は収益も重視します。幾分か淘汰現象も起こっているとは耳にしますが、初期投資費用が大きくなく、参入障壁の低い医療仲介AGENTは、雨後の筍のように設立されているという話も良く聞きます。
例えばですが、右から左に流すだけの業務実態のない架空サービスが数百万になったらどうでしょうか。通常の医療費が10万円に対し、300万円の架空サービスが加算されるようでは、日本の医療が誤解をされかねません。医療や倫理観の啓蒙、或いは、ある種のコントロールや制御も必要不可欠でありますが、但し、そこまでの業務を医療機関に求めるのも非常に難しいことが言えます。
拡大する需要に応える前提での、国際間における医療サービスの提供ですが、集客を担うAGENTと受け入れる側の医療機関の間に、【1】【2】【3】を統括するコーディネート会社の存在が必要不可欠です。